本田宗一郎との100時間/城山三郎

 数々のビジネス小説を手がけられた城山さんが本田宗一郎さんに密着した
100時間とともに、本田宗一郎さんの経営者としての半生を語る、といった
本です。

 この本の中で再三語られるのは、本田さんについてよく言われることです
が、本田さんの出処進退の美しさ、ということです。

 冒頭に、3代目社長の久米氏の就任式に臨席する本田さんの様子が描かれて
いるのですが、2代目の河島氏も、初代の本田さんを見習ってか、まだまだ
社長としてバリバリやっていける年齢のうちに後進に道を譲っています。

 本田さんも50代のうちに、両輪として会社を引っ張ってきた藤沢市と共に
社長の座を降りて、代表権すら放棄しています。

 それでも本田さんは、ホンダでの象徴的存在でありますし、だからこそ
影響力をできるだけ小さくしておきたかったのかもしれません。

 地位に恋々とする権力者が多い中で、ひときわその姿勢が眩く映ります。