左腕の誇り/江夏豊

左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)

左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)

 「江夏の21球」で知られる伝説的リリーフエース・江夏豊氏の自伝です。

 日本において投手の分業制の礎を築いたとされる江夏さんですが、元々
いろんな話を聞いて断片的に知っていたとは言え、この本を読んで、やっ
ぱり、それでも過小評価されていると感じましたし、もっと十全にその才
能を発揮していたら、どんなスゴイことになったんだろう、と思うにつけ、
本当にもったいないことをしたな、と思います。

 というのも、肩の酷使によるケガは、投手の職業病なので、百歩譲って
仕方がないにせよ、持病である心臓疾患、周囲との衝突など、これらが
無くて、ホントに野球に集中できる状況であれば、どんなに凄かったのか
な、ということなのです。

 でも、そういうところに敏感に反応してしまうところが江夏氏の真骨頂
であり、そういう繊細さがあったから、あれだけのことが成し遂げられた
とも言えるかも知れない、という部分もあり、才能と言うのは理不尽な
ものだなあ、とやりきれないキモチにさせられる本です。