木村さんは、サッカーに、いろんな形でひたむきに取組みな
がらも、決して報われることのない人たちを描くと絶品で、そ
れが、旧ユーゴスラビアの名選手たちの肖像を描いた緒作につ
ながっているのですが、この本も、旧ユーゴの人たち程の悲惨
さは無いにせよ、必死にサッカーに向き合って、結果報われる
ことがなかったばかりか、尽くした相手に石持って追われるこ
とになる、悲しい物語です。
主人公は、大分トリニータを0から築き上げた、溝畑氏です。
元々、かつての大分県知事が、県の活性化のために、2002年
のW杯の誘致の一環で、プロチームを持とうとしたのが発端で、
県庁主導でチームを作り、結局J1にまで登り詰めた訳です。
フツー、サッカーのチームと言えば、元々チームがあって、
そこに行政の支援があって…という流れでJリーグへと上が
って行くわけですが、真逆のアプローチで、支援者も無い中
から、自治官僚である溝畑氏が類い稀なる強引さで、ナビス
コ杯を制するまでのチームを作り上げていくわけです。
にも関わらず、その強引な手法ゆえか、作り上げたチーム
を応援する人から、ガン呼ばわりされてチームを追われてし
まうことになります。
精魂付きはてるまでスポンサーを求め、私財をつぎ込み、
のめり込みすぎて家庭も壊した挙句、チームを壊したとして
追われる切ない内容です。
まあ、やり方には色々言いたいことはあるんでしょうが、
大分のサポは、この本を読んで、どう感じるのでしょうか…