不道徳教育/ウォルター・ブロック

 

不道徳な経済学──擁護できないものを擁護する (講談社+α文庫)

不道徳な経済学──擁護できないものを擁護する (講談社+α文庫)

 

 

 原題を、“Defending the Undefendable”と言って、世間の
常識としては、非難されるはずの人々をリバタリアニズム(自
原理主義)の立場から擁護しようというモノです。

 リバタリアニズムって、あんまり馴染みのない言葉かもしれ
ません、経済関連の著書で知られる橘玲さんがよくその言葉を
引き合いに出されていて、橘さんの読者にはおなじみの言葉だ
と思います。
 で、その橘さん自身が翻訳というか、作者の承諾を得た上で
はあるものの、日本の読者に解かりやすいように、事例などを
日本の状況に合うように入れ替えて、半分くらい橘さんの作品
になっています…というか、読んでいる分には、他の橘さんの
作品と全くと言っていい程、違和感を感じません。

 弁護される人たちというのが、売春婦だったり、ポン引きだ
ったり、麻薬の密売人だったりする訳ですが、そんな人たちを
どうやって弁護するの?ということなのですが、これが見事な
までに、論理立てて擁護されています。

 例えば、売春婦だったら、誰かに強いられてやっている場合
は別として、自分の意志で性を売り物にして、喜んでそれを
買う人がいる以上、その契約は自由意志であるはずで、なぜ
それを法で裁く合理性があるのか?ということを問われています。

 また、門倉さんの一連の「夜のオンナ」に関する本でも言及
されていますが、非合法とされて、アンダーグラウンドに追い
やられることによって、犯罪人とされること以外にも、様々な
不利益を受けてしまう、ということが指摘されます。

 非難されるべき人達を“屁理屈”で弁護するのはバカバカし
いと思われるかもしれませんが、実際に一部の西欧諸国では、
売春や麻薬が合法化されることによって、様々な弊害を回避
している例もあることから、一定の合理性があることも否定
出来ません。

 自分の思考の柔軟性を鍛えるのにいい本かもしれません。