「買いたい!」のスイッチを押す方法/小阪裕司

 「モノが売れない」時代になったと言われて久しいのですが、片や高額の
商品であっても、競うように買われている商品もあるわけで、商品が飽和し
た今の日本の状況の中で、如何にお客さんに「買いたい!」と思ってもらえ
るか?ということについての本です。

 「売れない」と言っている売り手は、得てして、「モノ」を売ろうとして
いるのですが、今や消費者が消費行動において求めるものは、「モノ」その
ものではなくて、「未来の自分」の手がかりとしての「モノ」だということ
なのです。

 「未来の自分」それも、こうありたいと思う自分に資する「モノ」だと思
えば、端から見れば、何でこんなものをわざわざ…と思うようなものに大枚
をはたく事もありえるわけです。

 だから、そういうニーズに対応するために、どうすればいいかというと、
まずは、消費者の購買行動を細かく分解するんだそうです。

 その上で、最終的に購買を決断するに直結する「判断」を見出し、その
「判断」のための材料を消費者の人に提供することで、消費者の側が、
これは「未来の私」の一部分をなすものだ、と判断してくれれば、購買に
つながるということなのです。

 小阪さんの他の著書に比べると、比較的アカデミックな色合いの強い感じ
がする本なのですが、ソフトな語り口の中にも、こんな理論的バックグラ
ウンドがあったんだなあ、と関心させられる本です。