走る意味/金哲彦

 

走る意味―命を救うランニング (講談社現代新書)

走る意味―命を救うランニング (講談社現代新書)

 

 

 市民ランナーのカリスマコーチ・金さんの半生記です。

 在日韓国人として生まれ育ったということですが、それが原因で、恩師であり、瀬古利彦を世界的なランナーに育てたことで知られる中村監督に、韓国代表となることを勧められるが、その時点では国籍の変更に踏み切ることが出来ずに断ったことで、絶縁されてしまうという悲劇を体験されたということを知り、驚きました。

 その後、中村監督の死を経て、自らの意志で韓国代表でのオリンピック出場を志すも、成就せず引退、リクルートのコーチを経て、市民ランナーのサポートをされるに至ります。

 でも、2001年という、まだ現在ほどマラソン人口が増えていない時期に、市民ランナーの支援を仕事として取り組もうというバクチ的な転身を図り、それが現在の名声につながる訳です。

 その後、ガンを克服されることにも触れられているのですが、様々な挫折や軋轢、大病といった苦難に見舞われても、純粋に「走る楽しみ」を追及されてきたことが、現在の金さんへの絶大な支持につながっている、そんな気がする本でした。