パ・リーグ審判、メジャーに挑戦す/平林岳

 

パ・リーグ審判、メジャーに挑戦す (光文社新書)

パ・リーグ審判、メジャーに挑戦す (光文社新書)

 

 

 日本のプロ野球での審判経験のある方のメジャーの審判への挑戦記です。

 ドキュメンタリーとしても面白いのですが、日本とアメリカの野球観の違いであったり、専ら野球のトピックに限られているにも関わらず、日米の比較文化論的なところにまで話が及んでおり、非常に深遠な本で興味深く読み進めました。

 メジャーの中継なんかで、監督が激しく審判に抗議をしている様子が取り上げられているのを見ると、意外に思われるかも知れませんが、どっちかと言うと日本の方が抗議はしつこいようです。

 フェアであることを最上の価値とするアメリカ人らしく、ルールを守ればいいというスタンスではなくて、ルールには書いていなくても、それをすることがいいことなのか、そうでないのかを踏まえた上でプレーすることが多く、それが、最近では日本でも多くの野球ファンに認識されるようになった“Unwritten Rule”の存在につながっているようです。

 また、アメリカでは野球は点を取るゲームとしての色彩が強いのに対し、日本の野球は点を取らせないことに比重を置いているということで、個々の選手の実力にも関わらず、WBCなんかで勝てるのは、そういう野球観が寄与している部分もあるんじゃないか、という指摘は興味深いです。

 野球ファンのみならず、グローバルみたいなことに興味のある人にも読んでみてほしい本です。