英語化は愚民化/施光恒

 

英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)

英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)

 

 

 何とも刺激的なタイトルですが…「英語化」と言うのは、英語の公用語化を指すようです。

 そもそも、「近代化」と言うのは、それまでラテン語のみで扱われていた学術的なものを自分たちが話している言葉で取り扱うことができるようにすることで、特権階級を打ち破ることだったといいます。

 日本でも明治維新以降、当分の間外国語でしか学問が出来なかったのを、先人の懸命の努力で日本語でも学べるようにしてきた歴史があります。

 その過程では、学問を日本の実情に合ったカタチで受け入れるという取組があり、そのことでより深くその学問を浸透させていったという側面があります。

 それが英語を公用語化するということは、近代化に逆行してしまい、再び英語がデキる人・できない人の階級格差を生み出すことと、学問の空洞化が起こるというリスクがあるということです。

 個人的には英語を話すことは重要なことだと思いますが、なんでもかんでも経済の要求の下にグローバル化を進めるということが、国家としてのアイデンティティの喪失や格差の拡大という見逃せない弊害を伴うリスクがあるということを見逃してはならない、と認識した上で取り組んでもらいたい、と強く感じさせる本です。