資本主義はなぜ自壊したのか―「日本」再生への提言 (集英社文庫)
- 作者: 中谷巌
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/01/20
- メディア: 文庫
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かつて『入門マクロ経済学』に散々お世話になった中谷先生の著書を、「知の怪人」佐藤優さんが推薦されているということで、手に取ってみました。
資本主義の「自壊」ということなのですが、この本はサブプライム危機直後の2009年に出版されたということで、中国の台頭以前という状況の違いはあるのですが、フランシス・フクヤマさんの著書を盛んに引用しつつ、資本主義の「終わりの始まり」みたいなことを説かれます。
冷戦の終結による資本主義の勝利、さらにインターネットの普及により、そのコンセプトが急速に世界中に広まり「グローバル資本主義」が形成されていった結果、それぞれの地域において「持てるものと持たざるもの格差」が拡大していった状況をうけた警告のようです。
そもそも現代的な資本主義の隆盛というのは、アメリカから広まっていったようですが、依るべき伝統がなかったアメリカでは「論理の整合性」という、表面的にはケチのつけにくい…でも、どこか釈然としない…モノを前面に押し出すことで、効率を挙げてきて、それに「豊かになりたい」国々が追随するカタチでグローバル資本主義が拡大していったわけですが、それぞれの国では、元々あった伝統的な価値観というものがあったはずで、多くの場合グローバル資本主義は、そういった価値観と矛盾することが多く、あちこちで軋轢が生じているようです。
例えば日本では、かつての長期雇用均衡に見られたように、農耕民族らしい長期的な観点でモノを見ていたのが、成果主義のように、目の前の「成果」ばかり重視されるようになってしまい、人々が疲弊していったわけです。
ということで、伝統的な価値観に立ち帰り、おカネばかりを見るのではなく、どうすれば真の意味でシアワセになれるのか、ということをもうちょっとちゃんと見直すべきなんじゃないか、ということです。