中流崩壊/榊原英資

 

中流崩壊 日本のサラリーマンが下層化していく(詩想社新書)

中流崩壊 日本のサラリーマンが下層化していく(詩想社新書)

 

 

 大蔵省(現財務省)において国際金融を手掛けられ「ミスター円」と呼ばれて辣腕を振るわれた榊原さんによる、昨今の経済論です。

 ただ、やたらと統計関連の引用が多くて、かつタイトルに関わる内容は最後の方の20ページ程ということで、学者のセンセイ方が書かれた本を思い起こしましたが、そこはさすがに実務家のシゴトということで、それなりの教訓はあります。

 この本は2015年に書かれたということで、アベノミクスがまだ一定の成果を見せていた頃になるのですが、榊原さんはインフレ誘導政策に疑問を呈されていて、すでに日本はヨーロッパ諸国同様、低成長の局面にあるので、むしろマイルドなデフレ状態が妥当なのではないかとおっしゃいます。

 またタイトルに関わるところで、グローバル経済の進展により、これまで「中流」を形成してきたサラリーマン層の2極分解が顕著となっていおり、新興国でも代行できるような業務に携わっているモノは、容赦なく非正規化されていくということで、今後の日本の経済を維持していくためにも、若年層の支援を厚くしていく必要性を強調されています。

 ただそこは旧大蔵省出身者ということで、ただただ財政出動を増やすというワケではなく、財政均衡を見据えつつ…ということで、ヨーロッパ諸国で行われている「高負担・高福祉」型を提唱されています。

 これって、結構喫緊の課題だと思えるのですが、そういう動きって見られないですねぇ…