ビジネスエリートの新論語/司馬遼太郎

 

 

 司馬遼太郎さんが新聞記者だった昭和30年に、本名である福田定一名義で書かれた本です。

 「ビジネスエリートの新論語」ということなのですが、モチロン時代背景から言ってどっちとかいうと“サラリーマン”っていう方がずっと“らしい”のですが、サラリーマンの生活の様々な場面で役立つ、古今東西の格言を紹介します。

 意外だったのがその文体で、のちの端正な文体とは異なり、言ってみれば、『洋酒天国』に執筆されていた時の開高健さんを思わせる軽妙なタッチで、その時代のサラリーマンの悲哀をそこはかとなく感じさせます。

 ただ、選ばれる格言と言うのが、その後の司馬さんを思わせる博識ぶりで、古典から、同時代の本からの引用など、あらゆるところからでてきます。

 “エリート”ではなく、市井のサラリーマンの悲哀は、今もそんなに変わってないんだな、とクスッとさせられる本でした。