求心力/平尾誠二

 

求心力 (PHP新書)

求心力 (PHP新書)

 

 

 昨年、惜しまれつつ若くして突然の死を遂げた“ミスターラグビー平尾誠二さんの、今のところ「最後のメッセージ」です。

 平尾さんと言うと旧来的な「体育会」的体質に異を唱えて、すべてのプレイヤーが自律的に動けるようなリベラルなアプローチを提唱することをおっしゃっていましたが、“遺作”となるこの本では、一見、真逆のことをおっしゃっておられるように見えます。

 というのも最近では「自由」を重んじることが行き過ぎて、「勝利を求める」という、そもそもの「目的」を忘れて、ただ「自由」であることを求めることが「目的」になっているように、平尾さんの目には映っているように伺えます。

 あくまでも、ガチガチの縦割りの立場論より、ある程度の自律性を求めることが、勝利への近道になるからこそ、旧弊を破るために提唱したのであって、ナァナァになっては本末転倒だということで、今度は逆に、ある程度の「規律」が必要だということをおっしゃいます。
 
 こういう「手段の目的化」って日本人にありがちですよね…平尾さんは最後まで、本質を見失わなかったということの証左なのかもしれません。