「カネ」はなくとも子は育つ/森永卓郎

 

 

 エコノミスト森永さんの著作が一番盛んだった2000年代前半の著書で、その後の年収低下への対策と言った側面は、まだまだ前面には出てきていませんが、森永さんの思想の底流を流れるアメリカ的な効率主義への頑強な反発はいかんなく発揮されています。

 当時は「ゆとり教育」の弊害が顕著になってきていた頃で、小泉政権の政策の結果、総中流が終焉し、「格差」が顕著になり始めた時期でもあります。

 ということで、自分の子供には何とか「下流」に落ちて欲しくないということで、「ゆとり」の公立学校を避けて私立学校での教育を受けさせようとする人が急増したのが、この本が書かれた時期だったのですが、とてつもない負担があるにも関わらず、その成果が得られる確率ってどうなんだ?というのがこの本の主題なワケですが、もし相当低い確率をくぐり抜けて「成果」を享受したからと言って、シアワセになれるのか?ということを問われます。

 この辺が、のちの森永さんの「貧乏でも幸せ」的なテーマが出始めているのですが、多くの日本人が、当時は間違いなく盲信していて、未だに信奉者の多いアメリカ的なシアワセに正面から疑問を差し挟んだ、当時としてはかなり斬新な本だったんじゃないかと思います。

 おっしゃることにいちいち同意なんですけど、それを自分のムスメたちに反映させようとは思わないジブンってどうなんだろう…と言う疑問が改めて浮かんできて、かなり戸惑ってしまいましたが…