1998年の宇多田ヒカル/宇野維正

 

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

 

 

 元々『ロッキン・オン』誌におられた音楽ライターの方が書かれた日本の音楽シーンに関する本です。

 タイトルでは宇多田ヒカルが前面になっていますが、同年にデビューした椎名林檎aiko浜崎あゆみを中心に1998年前後の日本の音楽シーンを語られるワケですが、1998年というのは史上最もCDが売れた年だということで、音楽配信が中心となっていったその後の推移を考えると、きっと二度と破られることのない記録を残した年であるとともに、この3人+1がその後の音楽シーンに与えたインパクトからしてエポックメイキング的なところがあったということで、取り上げられているようです。

 個人的には4人ともあまり熱心に聴いたワケではないのですが、洋楽を中心に聴いていた著者の周辺のライターの間で、デビュー当初の3人が話題となったようで、宇多田ヒカルマイケル・ジャクソン椎名林檎をプリンス、aikoジョージ・マイケルになぞらえる向きもあったということで、アイドル中心だった日本の音楽シーンに、アーティスティックな色彩の濃い彼女らがトップに躍り出た当時を懐かしんでおられるようです。

 この本は、昨年久々にリリースされた宇多田ヒカルのアルバム制作が始まった当初に書かれたようで、当時のようなシーン活性の起爆剤になることを期待して締められていますが、確かに大きな話題にはなったものの、シーンを揺るがすようなインパクトは無く、このまま日本の音楽シーンはジリ貧なのかな、と…