根本陸夫伝/高橋安幸

 

根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男

根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男

 

 

 選手や監督としては特筆すべき実績はないのですが、「球界のフィクサー」として知られ、広島、西武、ダイエーの黄金期の礎を作ったことで知られる根本さんの評伝を、根本さんに縁の深かった20人へのインタビューで綴ります。

 根本さんはスカウト経験もあり、人とのつながりを非常に重視したということで、多くの選手から「オヤジ」として慕われていたわけですが、その「人脈」を自身が監督として成功するよりも、より強いチームを作るために「勝てる」監督を招聘するための地ならしをすることに心血を注がれていたようです。

 「最後の仕事」と言われるダイエーホークスへの王監督の招聘について、今やダイエーから球団を受け継いだソフトバンク球団の会長である王さん自身が語られるのですが、当初要請を受ける気のなかった王さんが、根本さんの球界全体の活性化に向けた熱意に押されて就任を受け入れるに至った過程を語られるのが印象的です。

 概ね根本さんの「シンパ」へのインタビューで構成されているのですが、根本さんの「義理・人情」的なところとは対極的なところにありながら、根本人脈として監督に就任し、西武に黄金期をもたらした広岡さんや森さんのインタビューがあったら、もっと深みが出たんじゃないかと思うのですが…