「安倍一強」の謎/牧原出

 

「安倍一強」の謎 (朝日新書)

「安倍一強」の謎 (朝日新書)

 

 

 強引な“お友達政府”で我が世の春を謳歌する安倍政権が、その秘訣を探るという本です。

 この本は、第二次安倍政権の全盛期である2016年半ばに出版されたということで、そこまでの安倍政権の政策を見ているワケですが、アベノミクスにせよ、それ以外の政策にせよ、打つ手がことごとく期待通りに行っていないのに、なぜ盤石の政権運営ができているんだろう、ということで検証されます。

 どっちかというと政策自体の成否よりも、自身の第一次政権時の反省、もしくは自民党が政権の座から滑り落ちた時の反省、さらには民主党政権の失敗を反面教師にして、官邸主導の強固な統治システムを確立したことにあるようです。

 これまで各省ごとに政務官経由での政策の浸透を図っていたのが、官邸が直接各省の事務方へのコントロールを行うことで、よりダイレクトに官邸の意志を浸透させていくことにしたとのことです。

 そんな中で菅官房長官を司令塔にした、官僚の人事権の行使により、よりその統制を強固なものにしたということです。

 さらには報道統制を強め、自らに批判的なメディアに対して、陰陽のプレッシャーをかけ、メディア自体の自己抑制の作用をもたらすようにまで仕向けたということです。

 こういうことを聞いていると、全体主義的で恐ろしくなるのですが、都議選における安倍政権の傲慢さへの反発がでたことは、まだそういった全体主義への抵抗ということで、ギリギリのところで民主主義が作用したと言えるのでしょうか…