嫉妬と自己愛/佐藤優

 

 「知の怪人」佐藤さんが、多くの人の足元を掬いかねない、厄介な感情について語られます。

 まずは佐藤さん自身が目の当たりにして、自らが逮捕されるまでに至った外務省や国会議員の間での“嫉妬”を語るとともに、文学作品に表れている「嫉妬と自己愛」を紐解いて行かれます。

 さらには精神科医などの「嫉妬と自己愛」に関連する専門家との対談を通して、専門的な知見を紹介されます。

 特に文学作品に表れる「嫉妬と自己愛」の紹介の中で、時代の変遷とともに相当そのカタチが変わってきていることを指摘されていて、かつては自己のプライドが故のギラギラの嫉妬があったものが、次第にそのプライドを傷つけないために、プライドを試されるような状況から「降りる」というカタチでプライドを保つというカタチが出現し、さらには2016年に芥川賞を受賞した『コンビニ人間』においては、全くと言っていいほど「自己愛」が欠落した人すら表現されるようになっています。

 というものの多くの人は自己愛の発現としての嫉妬を燃え上がらせた挙句に自己破滅を招く人も未だに多くいるはずで、如何にそういう感情を抑制するよう意識しておかないと、ふとした拍子に点火しないとも限らないですしね…