日露外交/佐藤優

 

日露外交 北方領土とインテリジェンス (角川新書)
 

 

 「知の怪人」佐藤さんが「SANKEI EXPRESS」での連載の中で“本職”である日露外交について語られたことを取り出されたモノを中心にしてまとめられた本です。

 第二次安倍内閣成立直後に日露首脳が距離を縮めたところから始まって、ロシアのクリミア侵攻により溝ができてきて、更にアメリカの牽制にも関わらず日露のパイプを増強しようとする過程での佐藤さんの“プロ”としてのコメントが紹介されます。

 佐藤さんによれば、最近の在ロシア日本大使館のことを“税金泥棒”とまで言って、基本的な仕事ができていないことを非難されていて、例えばロシア政権中枢の関係構築ができていないことにより、首脳同士の意思疎通も困難な状況にあるようです。

 特にこの本を読んでいて感じたのが“定点観測”的な活動の継続が意外な程の大きな流れをつかむことにつながるということで、佐藤さん自身はロシア政府の機関紙である『ロシアの声』での発信を追い続けることで、ロシア政府の意向の動向を観察されているということです。

 特にロシアとの間には“北方領土”と言う最大の懸案がありますが、柔軟に“損得勘定”で動くことが、意外と解決の近道なんじゃないかと、この本を読んでいて感じました。