クラウドからAIヘ/小林雅一

 

 

 ここ1,2年で急激にAIの注目度が上がってきましたが、この本は2013年に出版された本で「クラウドからAI」というITの「主役」の変遷を示したタイトルに多少の古さを感じさせるのを除けば、現在のAIの台頭を的確に紹介されていて、全く古さを感じさせない内容になっています。

 あまりITに縁の薄い人からすると、AIは最近出てきた概念のように思えるかも知れませんが、AIの考え方自体とその実現に向けた取組はコンピュータの黎明期からすでに始まっており、ここ数年のビッグデータ技術の進展で、ようやく長年考えられてきたコンセプトを実現できるだけの条件が整って、急激に一般的な注目を集めるようになったということです。

 コンピュータの世界では、あくまでも人間がコンピュータに「入力」した情報の範囲でしか処理ができなかったモノが、ビッグデータ技術の進展で「ディープラーニング」というコンピュータ自らが「学ぶ」ことができるようになったことが急激なAIの実用化の最大の要因のようです。

 そういったAIの実現に向けた歴史とともに、代表的な活用の方向性として、最近話題の自動運転について多くの紙面が割かれています。

 まだまだ自動運転なんて先のことだと思われている方も多いと思いますが、技術面でいうと、この本の書かれた2013年当時においても、完全自動運転まであと一歩のところまで来ており、実際の交通での実証実験の蓄積や法整備が追い付いてくれば、早晩実用レベルに到達するまでの成熟を見せているということです。

 さらにAIがもたらす明暗両面の影響についても語られていますが、筆者曰く1990年代のIT革命、インターネット革命を超えて、18,19世紀の産業革命を超えるインパクトをもたらすポテンシャルを持つ「AI革命」について、手っ取り早くかつディープに学べる、大変よい本でした。