もう一つの「幕末史」/半藤一利

 

 

 

 『昭和史』の半藤さんが「幕末」を語ります。

 半藤さんはお父様の実家が長岡で戦時中に長岡に疎開していたこともあって、司馬遼太郎の『峠』に描かれた幕末の長岡藩家老河合継之助が旧幕府軍側について新政府軍と激戦を繰り広げた長岡城攻防戦が語り継がれている土地柄に影響を受けたということもあって、旧幕府に同情的な史観を展開されます。

 ワタクシ自身も『峠』に傾倒していた時期があって、どちらかというと「薩長史観」に違和感を持っていたこともあって、半藤さんが展開される史観にナットクできるところが多いです。(母方の故郷が鹿児島だというのがフクザツなところなんですが…)

 確かに日本が急激な近代化を成し遂げるには、徳川幕府が政権を握ったままでは難しかったと思いますし、現代の我々もその“革命”成果の恩恵にあずかっていることは間違いないのですが、大政奉還以降に新政府側がやってきたことは、押込み強盗とさして変わりはないというのはもっともだと思いますし“明治維新”なんて美化は、単なる自己正当化の産物に過ぎないというところにもハゲしく同意します。

 歴史は勝者の都合のいいように語られるというのはセオリーではありますが、「知の怪人」佐藤優さんがいろんな側面から歴史を見て見ることが、教養を高めることにつながるとおっしゃっていますが、この本はかなりいい素材になるんじゃないかと思います。