「知の怪人」佐藤さんが同志社大学のサテライトキャンパスで行った民族問題に関する集中講義の内容を収めた本です。
冒頭で佐藤さんは、日本人の大半は民族問題に鈍感だとおっしゃいますが、それは多くの日本人が日本において支配的な民族に属しているが故のようです。
その後、“民族”ということについての代表的な理論的な背景とそれを踏まえた民族問題のケーススタディということでウクライナ問題と沖縄問題を取り上げられます。
民族問題というと土着的というか自然発生的なモノであるイメージがあったのですが、実はかなり人為的に形成される側面があって、例えばスターリンのように恣意的に用いることもあるということで、かなり恐ろしいところがあります。
一番印象的だったのが沖縄についての記述で、多くの日本人は沖縄のことについて民族問題という捉え方をしていないと思うのですが、そう考えることで腑に落ちることが多く、佐藤さんは“植民地統治”的な考え方を持ち込むことの必要性すら説かれます。
ということで日本人ももっと“民族問題”にセンシティブになる必要があるんだなと、改めて反省した次第でした。