<女帝>の日本史/原武史

 

〈女帝〉の日本史 (NHK出版新書 529)

〈女帝〉の日本史 (NHK出版新書 529)

 

 

 天皇陛下の「おことば」をきっかけに女帝に関する本が多く出版されていますが、その1冊を取り上げてみたいと思います。

 <女帝>と言っても天皇家に限らず、政治において大きな権力を持つことになった女性ということで、歴代の女性の権力者を取り上げます。

 女性の天皇を認めるようにするのか、ということが取り沙汰されましたが、制度として天皇を男性に限るようにしたのは、明治時代の皇室典範制定以後で、それまでは女性が天皇に即位していたのは事実で、女性の天皇について議論するときに、敢えてそこを無視しているような気すらします。

 飛鳥時代から奈良時代にかけては6人の女性が天皇に即位しており、そのうち皇極天皇孝謙天皇重祚しているので、男性の天皇との比率はほぼ半々だったということを忘れがちです。

 そういう事実があっても、女性の天皇は次の天皇が成長するまでの“つなぎ”だったとかと言われるようですが、重祚の経緯を見てもかなり実質的に形成を振るっていたようで、詭弁に過ぎないようです。

 武家の世の中になってからは、女性が前面で権勢をふるう場面は減っては行きますが、それでも北条政子日野富子といった権力者が登場します。

 ほぼ女性が前面に出なくなったのは、徳川家康が女性が権力を持つことを制限するメカニズムを幕府に取り入れて以降だということなのですが、それでも大奥が老中の人事に隠然たる影響力を発揮することはあったようです。

 与党と野党じゃないんですが、権力者が男性に偏るのではなくて、時折女性となることで、政治のバランスが取れるような気がするんですけどねぇ…