伝わる技術/風間八宏

 

 

 フロンターレをJリーグ屈指の強豪に育てあげ、グランパスの監督を務める風間さんの著書です。

 “伝える技術”ではなくて「伝わる技術」がタイトルであるところがミソなのですが、風間さん自身ドイツでプレーをしていたこともあって、日本サッカー界の“常識”と一線を画しているところがあって、選手に自分の意図を伝えることについていろいろと葛藤があったと思うのですが、そんな中で選手に思っていることを1から10まで「伝える」のではなくて、敢えて「伝えない」ことを含めて自分の意図がどのようにしたらよりよく「伝わる」か、ということについて試行錯誤されてきたようです。

 特に日本人は指導者の意図をできるだけ忠実に再現しようとする傾向が強くて、あまり「伝え」すぎるとアタマがいっぱいになってしまって自分のプレーを縛ってしまい、却って意図する方向性に進まないというところがあって、自分で「考えて」プレーすることで、監督の思う方向性を自ら見出すことで、より監督の意図を深い所で共有しようかということのようです。

 ドイツの経験からか、風間さんはプレーを楽しむことの重要性を強調しておられ、できるかぎり選手が自分で意図したプレーをできるようにすることが「楽しみ」につながるとも考えておられるようです。

 このあたり、キャラには大きな違いがありますが、ラグビー界において如何にプレーを楽しむかということを強調された今は亡き“ミスターラグビー平尾誠二氏と重なる部分もあり、改めて風間さんに期待を持った次第でした。