誰が音楽をタダにした?/スティーブン・ウィット

 

誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)
 

 

 日本人だとあんまりこのタイトルにピンと来ないのかもしれませんが、10年位前欧米人の友人はFTPサイトにアップロードされた音楽をパソコンから直接流していて、CDにお金を払うなんて!?と言っていたのを思い出します。

 そういった状況を生み出すに至った、音楽ファイルの圧縮技術の進化や、発売前のアルバムをいち早くFTPサイトにアップロードしようとするシンジケート、そしてそれに対応する音楽を供給しようとする側のせめぎ合いを描いた小説です。

 多分かなりノンフィクションに近いものがあるようで、かなりの緊張感をもって描かれているのですが、ここまで打算的にアーティストの活動を蔑ろにするっていうのは、ちょっと日本では考えにくいところがあって、実際あんまり日本ではFTPサイトからの
音楽の取得と言うのは欧米、特にアメリカほどには広まらなかったようです。

 最早音楽産業においてCDを売って収益を上げるというのは、少なくともアメリカではビジネスモデルとしては成り立たなくなってしまって、ライブやロックフェスなどにシフトしていっているようですが、それだと提供できる範囲が限られていることから、一発デカいのを当てるということが不可能で、そうなると音楽を志す人自体が減ってジリ貧になってしまわないかと…