80's/橘玲

 

80's エイティーズ ある80年代の物語

80's エイティーズ ある80年代の物語

 

 

 橘さんの自伝的な小説で、大学を卒業する頃から作家になる以前の編集者時代を過ごした80年代を、その頃に流行った『雨上がりの夜空に』『見つめていたい』『雨音はショパンの調べ』といったヒット曲を各章のタイトルとして振り返られます。

 橘さんは編集者時代、かなりアヤシげな出版社や出版プロダクションを転々とされていて、出版不況久しい今とは違い、バブル期のカネ余りの中で、ちょっとした企
画が大当たりしてアブク銭を享受できるような環境にあり、そんな境遇を踏み台にしてその後名を成す人がいたり、身を持ち崩す人がいたりと、橘さん自身も細い塀の上を歩いて、どっちに落ちるか!?という境遇にあったようです。

 そんな中でなぜ橘さんが名を成す方向に行ったのかというと、ご本人は本の中で自分の成功をひけらかすようなことはおっしゃいませんが、状況に対して冷静な目で思考するクセがあったからなんじゃないかと感じます。

 アヤシげなティーン女子向けの雑誌であっても、オウム真理教を追う硬派な雑誌であってもスタンスはそれほど変わらなかったんじゃないかな、という気がします。

 そういうキワドい状況を超えて、作家・橘玲がこの世に生まれた奇跡的な状況を追体験できるスリリングな内容となっています。