勝ち過ぎた監督/中村計

 

勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇 (集英社文庫)

勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇 (集英社文庫)

 

 

 2004年に北海道勢としては、というよりも東北以北では春夏通じて初めて甲子園を制覇し、翌年は連覇、更にその翌年には決勝で“ハンカチ王子”斎藤投手擁する早稲田実業に引き分け再試合の熱戦の末敗れて準優勝となった駒大苫小牧インサイドストーリーを、当時同校を率いていた香田監督を中心に語られます。

 こう書くとカンドーのストーリーを想像しがちですが、不穏なタイトルが暗示するように、高校野球を扱った本としては異例な程ドロドロした“現実”が描かれます。

 この本をは松井秀喜選手が全五打席で敬遠されたことで知られる1992年夏の甲子園での明徳義塾対星稜戦を題材にした『甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)』を書かれた中村さんによるモノで、高校野球の闇の部分に迫る一連の諸作で知られています。

 香田監督自身かなり独特のキャラで誤解を受け易い部分があったようなのですが、快挙で持ち上げられ、不祥事で叩かれるということの繰り返しの中で、よくぞ3年連続でチームを夏の甲子園の決勝まで導いたのは驚嘆すべき手腕ですが、その過程で選手からボイコットに近い反発を受けたことや、周囲のバッシングありで、どうやってそこまでチームをまとめていけたのがが、読んでいて不思議になるくらいです。

 確かに注目度の高い大会で、その成功をつかむのは大きな目標でしょうし、その成功に群がるオトナたちがいたりすることもあり、我々外野が歪めているという側面もあるモノの、何とか選手には純粋に教義に集中できるような環境が提供できないかと考えさせられる本でした。