未完の憲法/奥平康弘×木村草太

 

未完の憲法

未完の憲法

 

 

 先日佐藤優さんの対談本『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』で、憲法関連の推薦図書として挙げられていたので手に取ってみました。

 佐藤さんが新進気鋭の憲法学者としてよく著書を紹介している木村さんが、よく著書を教材として読んでいたという奥平先生と対談されているのですが、そもそも憲法というものの成立ちから、日本での憲法の在り方、そして昨今取り沙汰されている安倍政権による憲法改正への取組について、憲法学者としての観点を語られています。

 そもそも憲法というのは市民革命の結果として勝ち取った自由を固定するという意味合いがあって、今後国家権力によって人権が蹂躙されないために制定するといった性格があります。

 でも日本においては明治憲法は諸外国からナメられないように、現憲法はGHQからの圧力で制定されたという事情があり、国民不在で制定されたこともあり、本来的な意味での立憲主義とは言えない状況であったことが指摘されています。

 そういう意味で、昨今の憲法改正論議も、改正そのものが目的となっており、どういう国家にしたいかというグランドデザインなしで行われようとしており本末転倒であることを厳しく非難されています。

 ましてや先に96条(改憲発議の要件)を改正してからという小手先論に訴えていることについては憲法の精神を根底から覆すものとしてありえないことだとおっしゃいます。

 平和ボケの日本人はあんまり危機感を持っていないかもしれませんが、安倍政権のような強権的な政権ができると、どうされてしまうかわからない危険性があることは確かであり、自分たちの人権をどう守るかということをちゃんと考えておかないとヒドい目に遭いかねないようです。