新学問のすすめ/佐藤優

 

 

 以前、「知の怪人」佐藤優さんが母校・同志社大学神学部で行った講義の内容をまとめた『悪魔の勉強術』をこのブログで取り上げましたが、この本はその続編と言うか、同じく同志社大学神学部で2018年に行われた集中講義の内容をまとめたものだということです。

 かねてから佐藤さんは著書の中で再三、神学が生きて行く上での課題解決において非常に実用的なものであるということを強調されていますが、この本は最も端的にそのことを示しているのかも知れません。

 というのも、この本の元となった講義では、神学に関わりのある本、聖書などを始めとして、神学の考えに基づいた本、神学的な視点が伺える本などを購読しながら、現実の世界で最近起こったことについて、神学的な観点から、その対処法を考えるということを紹介されています。

 元々キリスト教自体が苛烈な弾圧を受けていた時期もあり、布教における困難を伴った時期が長かったこともあって、如何に広めていくかと言うことについての方法論が神学を形成していったということで、言ってみれば人間の生活のあらゆる側面に関するノウハウに触れられていると言っても過言では無いことを指摘されています。

 この本で紹介されていることで驚いたのが、神学が必ずしもキリスト教への信心と直結したものではなく、信心をを持たない神学者もおられるということです。

 それは逆に神学が実利的であるということの証左とも言え、その後の西欧での様々な学問の起源とも言われており、その有用性は未だ強力なモノであるようです。