知らなきゃよかった/池上彰、佐藤優

 

 

 池上さんと佐藤さんのタッグ本が再び出版されたのを見かけたので、手に取ってみました。

 前作の『新・リーダー論』ではかなり池上さんが佐藤さんの圧倒的な知性に押され気味でしたが、今回はそれぞれの得意分野を引き出しあって、ガップリ組み合った姿を見せてくれます。

 「知らなきゃよかった」というのは、この本ではここ1、2年の出来事の“裏側”を流れる事情を紹介されているのですが、そのキモとなる事情についての共通した認識のようです。

 北朝鮮を取り巻く状況、日本の官僚の迷走、トランプ米大統領の暴走、世界の指導者の独裁化の進展など、いずれも“知らなきゃよかった”と思わず言いたくなるような内容が満載なのですが、そのなかでも一番戦慄を覚えたのが完了を代表とする日本人全体の“劣化”についての指摘でした。

 元官僚である佐藤さんと官僚を取材する立場だった池上さんとしても、モリカケ問題を始めとする官僚の対応の拙劣さは想像を絶するモノだったようで、モラル的にも知性面でも、国家的な危機と言えるほどの劣化が露わになってきていることを指摘されています。

 それだけではなく、それを追求するはずのメディアや野党の劣化も目を覆うばかりみたいで、日本全体の知性のレベルの劣化は危機的状況のようです。

 “知らなきゃよかった”じゃ済まされないんでしょうけど、個人的には後数十年やり過ごせればというところも無きにしも非ずなんですが、ムスメたち以降の世代のことを考えると、そうも言ってられなくて、何とかしないとなぁ、とは思うのですが…