下り坂をそろそろと下る/平田オリザ

 

 

 劇作家の平田さんが衰退期に向かう日本の在り方を語られます。

 冒頭「まことに小さな国が、衰退期をむかえようとしている。」と司馬遼太郎さんの代表作『坂の上の雲』の冒頭をパロディで始められているのですが、『坂の上の雲』が日本人が“坂”を登り始めた時期だとすれば、平田さんは今が“坂”を下っている状況だということを対比的に表現されたということなんでしょう。

 平田さんは日本人がこれまでの歴史の中で2回世界の中心にいたというカン違いをしていたことを指摘されています。

 1回目は日露戦争第一次世界大戦を経て国際連盟常任理事国となった時期で、2回目は高度経済成長期を経て世界第2位の経済大国となったことだとおっしゃいます。

 ただそれは日本人のカン違いで世界的に見ると中心にちょっと近づいたに過ぎないということですが…

 1回目は第二次世界大戦での敗戦という大きな代償を払ったワケですが、そういう失敗を踏まえて2回目のカン違いについて如何に身の丈にふさわしいレベルまでソフトランディングするかということを紹介されています。

 例えば高度経済成長期の原動力でもあった東京一極集中を是正するための地方活性化の一環としての文化的な活動であったり、過度の競争から生まれた排外的な考え方を改める考え方だったりします。(まあ、現状韓国に対しては真逆の動きをしてしまっていますけどねぇ…)

 それはひたすら効率を求めて失った人間性を取り戻す動きでもあり、そういった精神の充実こそがハードランディングを防ぐというのは非常にナットクがいく話で、キモに銘じておきたいところでした。