人類学者の方が世界の各自でのフィールドワークを通じて、「こころ」を語られます。
あとがきでこの本を書かれた意図について「こころとは何か。そして、人間性の起源はどこにあるのか、さらに、こころは人類の未来を変えることができるのか」という問題意識につかれて、フィールドワークをされたことをまとめられています。
アラスカやモンゴル、チベットなどでフィールドワークをされた経験を紹介されていますが、かなり原始的な狩猟生活を含めて、自然と共に生きるような生活を送っておられる方と共にされるフィールドワークが中心に紹介されます。
そういった生活の中では、現代の先進国たる日本で生活している一般的な日本人であれば、普段の生活からは遠い存在となった“死”と隣り合わせの生活が未だ顕著であることが露わになります。
人間の死に限らず、狩猟における動物の死であったり、葬送が自らの手で行われたりと、一般的な先進国で生活される人であれば、病院に勤務され方を除けば軍人でさえも“死”から隔絶された生活を送っているのを思うにつけ、如何に現代人が自然の生活からかけ離れたところで生活しているのかを思い知らされます。
それはそれで、不要な感情の揺れから解放されるという意味ではアリなのかも知れませんが、やはり“死”をフィクション的にしてしまうのは、生を受けた立場としては、何かどこか間違っているんじゃないかということを、突き付けられているような気がしました。