大君の通貨/佐藤雅美

 

幕末「円ドル」戦争 大君の通貨 (文春文庫)

幕末「円ドル」戦争 大君の通貨 (文春文庫)

 

 

 出口さんの『教養が身につく最強の読書 (PHP文庫)』の中で幕末の動乱を為替から見た内容だと紹介されていたので手に取ってみました。

 開国当初、金貨である小判と銀貨の交換比率が欧米と大幅に異なっていたことから、大量の金銀の流出と物価の大幅な高騰を招き、そのことが幕府の崩壊の遠因となったとも言われているのですが、その過程が幕府と、ハリスやオールコックといった開国直後に日本に駐在していた外交官との暗闘を事細かに描くことによりあぶり出します。

 外交官とはいういうものの、ハリスなどはかなりアヤシげな出自で、小判を買い漁って暴利を貪っていたいたということです。

 幕府も幕府で、銀貨の質を変えて交換比率を操作しようとして混迷を招くなど、オールコックが一旦イギリスに帰国した際に、小判の横流しを糾弾される場面で触れられているのですが、そのことに起因する物価の高騰により、決まった俸禄から収入しかない下級武士の不満が積もり積もって倒幕運動につながったという側面に言及されています。

 その中で、当時日本にいた外交官が真っ当に振る舞っていたとしたら、幕府の命脈はもっと永らえたとまで言われています。

 倒幕のメカニズムを経済の側面から見たダイナミックな内容で、こういった側面からのモノを見たことがなかったので、幕末史好きの人には是非とも一読して、そういった観点からの歴史の流れを体感して欲しいところです。