結論は出さなくていい/丸山俊一

 

結論は出さなくていい (光文社新書)

結論は出さなくていい (光文社新書)

 

 

 『英語でしゃべらナイト』や『爆笑問題のニッポンの教養』などの人気番組を手掛け、“教養バラエティー”といわれるジャンルを切り開いたと言われるNHKでプロデュ
ーサーをされた方の著書です。

 丸山さんが手掛けた『ニッポンのジレンマ』に出演されていた社会学者の古市憲寿さんが、丸山さんの前著の帯に「面白いことを自信なさげにぼそっと言う」というコメントを寄せられたということを冒頭で紹介されていますが、280ページ余りにもわたる比較的ボリュームのあるこの本を、淡々とそんなトーンで進められます。

 しかもテレビ局のプロデューサーの著書なんて言うと、自分が手掛けた番組の大自慢かと思いきや、ご自身が手掛けた番組にも多少は触れられてはいるものの、どっちかと言うとそれらの番組を手掛けた思想的な背景みたいなモノがほとんどで、大半は柄谷行人吉本隆明西部邁といった思想家や哲学者の著書や発言を引き合いに出して、まるで哲学書を読んでいるかのように感じます。

 昨今では何かにつけて白黒つけないと気が済まないと言った風潮がありますが、この本で延々と述べられているように、必ずしも結論を出す必要はなく、施策を巡らすこと自体に意義があるんだとおっしゃられているような気がします。