開国の使者/佐藤賢一

 

開国の使者  ペリー遠征記 (角川文庫)

開国の使者 ペリー遠征記 (角川文庫)

 

 

 この本も先日紹介した『大君の通貨』同様、出口さんの『ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊』で紹介されていたので手に取ってみました。

 この本は、ペリー自身が書かれた『ペリー提督日本遠征記』を参考として書かれたということもあって、ペリー自身から見た日本との交渉の過程を紹介されているのですが、それが故にアメリカ側の狙いや、我々が日本の歴史として知っているのと、ちょっと違う幕府の外交の姿が伺えます。

 出口さんはこれまでの著書でもアメリカがなぜあの時点で日本に開国を迫ったのかということについて、当時の世界情勢とアメリカの世界戦略を踏まえた意義についての見解を紹介されていますが、当時ヨーロッパの列強と比べて、植民地政策において後れを取っていたアメリカにとって、イギリスをはじめとするヨーロッパ列強と伍して行くために、太平洋航路を開拓することが必須であり、そのために日本との連携がかなり重要だったということが伺えます。

 ただ当時のアメリカでは、人材の配置にかなり制限があったらしく、日本との外交においても海軍の軍人であったペリーがその任を担っていることからも伺えます。

 我々が学ぶ日本の歴史では、ペリーの来航に慌てふためいたイメージがありますが、少なくとも幕閣の首脳はペリーの来航を何らかのカタチで認識しており、アメリカの狙いもかなりのレベルで把握していたようです。

 だからこそ、ペリーの圧迫外交がうまくかわされていたことをペリー自身もうすうす感じていたようで、当時の幕閣は情報戦や外交戦略でもリードしていたとも言えるようです。

 そういうことを聞くにつれ、その後、通商条約の締結を政争の具としてしまい、不平等条約を結んでしまった井伊大老以下の当時の政権の愚挙が悔やまれます。

 それにしても当時ほとんど外交の経験のなかったはずの幕閣が、こんな粘り強い外交を展開したことにオドロキを禁じ得ません。