日本の歴史を天皇家から見て見ようという本です。
鎌倉時代以降、建武中興の一時期を除けば、幕末まで天皇家は、ほぼ歴史の表舞台では影が薄い存在で、天皇家を中心に日本史を見るというのはどうなのかなぁと思いながら手に取ってみましたが、やはり陰に隠れながらも、背景ではかなりの影響があったんだなぁと実感します。
神武天皇から十数代までは神話の世界で、実在の存在ではないというところが通説になって久しいのですが、この本では実在の天皇は仁徳天皇からという説を取られています。
それ以降も、割とはっきりと史実が残っている飛鳥時代以降であっても、実は即位されていなかったのではないかという指摘をされている天皇がいるようです。
乙巳の変で蘇我氏の滅亡後に退位したとされる皇極天皇は、実は即位していなかったのではないかという説が有力なのには驚きました。
逆に、壬申の乱で、その後天武天皇となった大海人皇子に敗れた大友皇子が、戦後に弘文天皇のおくり名を受けたということですが、日本書紀では即位に触れられていないモノの、水戸藩の『大日本史』編纂における研究によると、実質的に即位していたとの見解を示されているということです。
そういったその後の有力者の恣意的な判断で即位の事実すらもねじ曲げられているということも、あちこちにみられるということは、なかなか興味深いところでした。