昭和史の大家である保坂さんのこれまでの著書からエッセンスとなるような叙述を集めた本です。
個人的にはこういう構成の本って、著者の意図が行き届かないまま、抜き出されたフレーズが羅列されるとしか思えないことが多くて、あんまり意義を感じないことが多かったのですが、保阪さんは、おっしゃられていることの一貫性がハンパないこともあって、そういった構成の類書と比べて、驚くほど違和感がありませんでした。
印象的だったのが、第二次世界対戦の開戦時の首相の東条英機の葛藤や、昭和天皇の陸軍への不信感などもあるのですが、何といっても現上皇陛下の不戦への決意です。
保阪さん自身も上皇陛下夫妻が天皇・皇后であった時の巡礼に触れられて、その時点の日本で一番平和を希求されているのが誰かと言われれば、迷わず当時の天皇皇后両陛下だとおっしゃられているのが印象的です。
昨今、安倍政権の下で右傾化が取り沙汰されていますが、そんな中で、こういう戦時中を知る人たちの“痛み”を語れる人のおっしゃることの存在感が大きくなることが望まれます。
