勝てる脳、負ける脳/内田暁、小林耕太

 

 

 昨日に引き続き集英社新書でスポーツに関する本なんで、昨日の本のあまりのヒドさにイヤな予感もしましたが、こちらはなかなか秀逸です。

 テニスを中心に取材をされてきたスポーツライターの方と神経行動学の専門家が互いの専門分野をガッチリ噛み合わせて、一流のアスリートのアタマの中を詳らかにします。

 ワタクシがテニスの中継を見始めた頃はボルグとマッケンローの全盛期で、よくマッケンローがジャッジにクレームをつけていたのを記憶していますが、当時はチャレンジなんて制度も無かったのですが、コートの向こうから打ったボールがどこにバウンドしたかなんて見えてるはずもないのですが、大体マッケンローがクレームをつけたボールがよく確認すると入ってたことが不思議でしょうがなかったのですが、同じことが錦織選手のチャレンジにも表れていてトッププレイヤーがこういう感覚で打った時にはアウトのはずがないという経験の蓄積からの判断があるようです。

 さらには、それまで順調にプレーしていたのですが、勝ちが見えてきて突然崩れたりとか、イップスといって、それまで何も考えずにプレーできていたのが、どうプレーしていいのかわからなくなるといったトッププレイヤーにでも起こりうるシチュエーションについて神経学的な観点から事細かに解説されていて、そのメカニズムがよく理解できます。

 1冊の本にしようと思うんなら、これ位のバックグラウンドを持って書いてもらいたいですね、橘木センセイ!?