負けてたまるか!/中村修二

 

負けてたまるか!  青色発光ダイオード発明者の言い分 (朝日選書)

負けてたまるか! 青色発光ダイオード発明者の言い分 (朝日選書)

 

 

 青色LEDの発明で2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村さんの2004年に出版された自伝的な著書です。

 当時は中村さんと言うと、ご自身が発明された青色LEDの対価について勤務先であった日亜化学との訴訟で知られる存在でした。

 中村さんの訴訟以降、日本の企業における発明の対価についての見直しが進んだと言われてはいるのですが、それでもこの本で紹介されているアメリカでの状況を見ると、この本が出版されてから15年余りたった現時点においても、絶望的なまでの差を感じさせられます。

 元勤務先との訴訟に勝訴された直後の出版ということで『負けてたまるか!』と言う、いかにもなタイトルなんですが、敢えて地元の大学や企業を選ぶところや、独力に近い状態で青色LEDを開発したところなど、反骨心の強さが印象的です。

 日本は“ものづくり大国”を標榜しながら、まだまだそのタネを生み出すはずの科学者へのリターンについての考え方が貧弱であることを中村さんは問題視しておられ、科学者がプライドを持って開発に取り組んで行けるようにするとか、科学者を志す次世代の人が増えるようにという意味合いもあって訴訟に踏み切られたということで、日本企業も内部留保の積み上げにばかり汲汲としている場合ではなく、将来を担う科学者への“投資”といったところおカネをつぎ込んでいかないとドンドン先細りになっていってしまうんじゃないかと危惧されます。