日韓激突/手嶋龍一、佐藤優

 

 

 『独裁の宴』『米中衝突』と紹介してきました手嶋さんと佐藤さんの対談本がまた出版されたので手に取ってみました。

 

 ワタクシもこのお二方の対談を楽しみにしているのですが、出版社にもそういった声が多数寄せられているようで、その要望に応えてここ3年、毎年出版されているのですが、その度に答え合わせのプレッシャーがあるとおっしゃられてはいるのですが、それでも分析の結果である予測を修正されたことは無いと豪語されるお二方であります。

 

 この本では冒頭で昨今の日韓の軋轢について言及されているのですが、それもただ単純に日韓の歴史的なモノだけが軋轢を生んでいるのではなく、米中関係を始めとする世界情勢の大きな潮流の中に位置づけることができるとおっしゃいます。

 

 特に米中の綱引きの中で、ただひたすら自身の体制継続を望む北朝鮮と「異形」のトランプ大統領が接近することで元々南北の分裂で、元来“半島国家”であった韓国が、北朝鮮と分断されることで“海洋国家”としてアメリカや日本とつながらざるを得なかったところを、北朝鮮との融和の可能性が出てきたことで、本来の“半島国家”に回帰して中国と結びつきを回復しつつあるのは自然な流れだと指摘されます。

 

 また、日韓の軋轢と比べて、同じ旧植民地である台湾の好意的な姿勢が取り沙汰されますが、確かに韓国の頑なな反日の姿勢は、その手法も含めて国際的にも褒められたモノではないことが多いのですが、その遠因としては日本が台湾に対して見せたほどの旧宗主国とし手の配慮を韓国に対しては行ってこなかったことを指摘されていて、そういった旧宗主国としての姿勢に欠けていることをイギリス等の姿勢と比較して指摘されているのが印象的です。

 

 この本ではアメリカとイランの軋轢において安倍首相が果たした役割についても紹介されているのですが、日本のメディアではほぼほぼ失敗との評価が大勢を占めているのですが、インテリジェンスの世界ではそれほど単純じゃない効果を指摘されていて、インテリジェンスの世界の複雑さと言うか深遠さを窺わせます。

 

 それにしてもインテリジェンスの世界の深さや複雑さを痛感される内容で、書かれた内容の答え合わせも含めて、毎年とは言わないまでも定期的にお二方の対談は見ておきたいところです。