彼らの神/金子達仁

 

彼らの神 (文春文庫)

彼らの神 (文春文庫)

 

 

 昨日、沢木耕太郎さんのスポーツノンフィクション集である『敗れざる者たち』を紹介して、あくまでもノンフィクションの素材としてスポーツを対象にしているんじゃないか、ということに触れましたが、逆に、ジャーナリズム的な色彩を強く出されているのが金子達仁さんなんじゃないかと感じます。

 

 『決戦前夜』なんかは、フランスW杯の予選の進行に合わせて連載されていたということで、かなりジャーナリズム的な伝え方をされている色彩が強いですが、あくまでもノンフィクションとして受け取れる内容なのですが、『28年目のハーフタイム』の『経験というタマゴ』という章で、日本代表が世界で勝つために必要なこと、というカタチでご自身の持論を展開されているように、単なるノンフィクションから一歩踏み出して、啓蒙的な内容を取り込まれています。

 

 その後も柔道やラグビーの知見をサッカーに取り入れては…といった提唱を含む執筆をされていたこともありますが、この本は、サッカーに限らず日本のスポーツを如何にして強くしていくかということについて、様々なスポーツを様々な観点から強化していくための方法論を探られるといった内容になっています。

 

 この本の元となった原稿は2001年に執筆された連載だということで、金子さんがここで書かれていることが不十分ながらも反映されて、サッカーやラグビーなど一定の成果を上げた競技もでてきていますが、どうしてもセンセイのいうことを大人しく聞く子が評価される学校での教育や、何でもかんでも“お上”が決めたルールベースで規律が成り立つ社会といった要素が、決定的な部分で日本のスポーツの強化を阻害しているんじゃないかと言う、一種絶望的な指摘もあります。

 

 こういう啓蒙的な要素をスポーツノンフィクションに取り入れたというのは、金子さんの功績なのかも知れず、特にサッカーライターを中心にそういう内容の執筆が増えたというのは、金子さんの功績と言えるかもしれません。