一切なりゆき/樹木希林

 

一切なりゆき 樹木希林のことば (文春新書)

一切なりゆき 樹木希林のことば (文春新書)

 

  

 日本を代表する名優であり、2018年9月に惜しまれながら亡くなられた直後に出版された、生前のインタビューのエッセンスを集めた本です。

 

 樹木さんというと2005年に乳がんに罹患して以来、ほぼ全身への転移を経験しながらも癌と折り合い、亡くなられるまで十数年治療しながら『あん』や『万引き家族』で、代表作とも言える名演を披露されたワケですが、この本では、そういった状況について、病との折り合い方や、仕事への向き合い方などを語られたものも含まれます。

 

 晩年の樹木さんしか馴染みのない方は、物静かで淡々としたイメージをお持ちの方が多いと思われますが、ついに亡くなるまで添い遂げられたご主人であるロックンローラー内田裕也さんとの離婚訴訟を経ての元サヤのエピソードからもうかがえるように、若い頃はかなり”尖った”キャラであったようで、大病の影響もあったでしょうが、徐々に”悟って”いかれていったように見受けられます。

 

 『一切なりゆき』とのタイトルにあるように、柳のように流れに逆らわず自然に任せたようなスタンスを取りながらも、どこかピンと一本筋の通った佇まいは、多くの人にとって憧憬を感じる生き方でしょうし、だからこそ亡くなられた直後、あれだけの惜しむ声が聞かれたんでしょうね…