韓国 行き過ぎた資本主義/金敬哲

 

 

 ソウル出身のジャーナリストの方が昨今の韓国における市民の苦境を赤裸々に紹介されます。

 

 そういう韓国社会の問題提起っていうと、どうしても日本では嫌韓的な考え方を持つ人々をターゲットにして大げさにあることないこと言っている本が少なからずあるので、そういう本を読む時は話半分というか、ホントに!?と思いながら読むようにしているのですが、この本は韓国人の方が書かれているということもあって、ある程度の信憑性があるんだろうなと思いつつも、これがホントだったら…と思うと戦慄を感じずにはおれないほどの惨状で信じられない思いもあります。

 

 韓国での若年層の失業率の高さは日本でも報道されていて、大学を出てもマトモにバイトにもありつけないということで、以前は「恋愛・結婚・出産」を諦める「三放世代」というのが取り沙汰されましたが、最近はそれに加えて就職やマイホームを諦める「五放」や人間関係や夢も諦める「七放」さらには人生を諦めてしまう「N放世代」と言われるまでに至っているようです。

 

 大学に入るのにも日本を遥かにしのぐ苛烈な競争を勝ち抜いているワケですし、それ以前に大学に入るための学習をするための学習塾に入るための予備校まで出現するような競争を勝ち抜いていってその状態ですから、韓国の若年層の虚無感を思うとあまりにも救いがありません。

 

 さらには子供に少しでも上の学歴が付くようにとひたすら支援をし続け、家庭崩壊を招いてしまう例も少なくないようです。

 

 そんな中でごく限られた富裕層のみが美味しい想いをしていることに言いようのない虚しさを感じるでしょうし、不正をしてまで子息にゲタを履かせてしまったが故に地位を追われた曹国元法相への怒りも分かり過ぎるほど分かりますし、よく暴動が起きないものだな、と思わざるを得ません。