歴史人口学で見た日本/速水融

 

歴史人口学で見た日本 (文春新書)

歴史人口学で見た日本 (文春新書)

  • 作者:速水 融
  • 発売日: 2001/10/19
  • メディア: 新書
 

 

 出口治明さんが歴史関連の著書で、再三、その時期ごとの人口について言及されているのですが、そういわれてみれば、デービッド・アトキンソンさんが著書の中で、経済規模はその時の人口規模が規定する、みたいなことを再三おっしゃられているように、その時期の経済規模を示すもので、極めて重要なんだな、と思うようになりました。

 

 この本は日本における”歴史人口学”の草分けとも言える方が、そもそも"歴史人口学"というものがどういうモノなのかを紹介された本です。

 

 明治以前は戸籍も未整備で人口を把握するのはなかなか困難だとは思うのですが、キリスト教の教会が教区ごとの構成員を把握していたように、日本の寺院でも、特に島原の乱以降は切支丹の弾圧ということもあって、「宗門改帳」といったカタチで各寺院が檀家の構成員などの管理を求められていたということで、そういった資料を精査することで人口動態を追うことができるということで、歴史人口学という学問が日本でも始まることになったようです。

 

 「宗門改帳」は、成人までに亡くなった子供を記載していないことがあるなど、正確に人口を捉えるという意味では相応しくない部分もあるのですが、それでも大まかな人の流れなどが分かり、その趨勢を見ることで、経済規模の向上による人口の増加や疫病・飢饉による人口の減少といった人口動態のみならず農業生産性の動きを見たり、婚姻の動静といった社会状況を伺うこともできるということで、まさにその時代を生きた人たちの”生活”を捉えることができるようです。

 

 こういった学問が進化することで、歴史がよりイキイキしたカタチで捉えられるようになることを期待してやみません。