老人ホーム付きの医師が語られる「死に方」に関する本です。
ひと頃このブログでも、がんの放置療法を推奨する近藤誠先生の一連の著書とそれに反論する内容の本を集中的に紹介した時期がありましたが、確かにガンを「放置」することについては躊躇する部分がありますが、日本における医療の考え方として、何が何でも救命しようとするあまり患者のQoLを損なっていることが多いという指摘についてはナットクするところがありました。
この本を書かれた中村先生も現代医療がもたらす過度の診療が、却って患者に苦痛をも強いている実例を示されます。
ある程度以上の年齢の方だと、老化に伴う細胞のエラーであるガンに罹患するのは当たり前であり、放っておけばそこまでの苦痛を強いられることも稀なようですが、抗がん剤治療や放射線治療により副作用に苦しむ人がいたり、胃瘻により奇形となってしまう例などを紹介されています。
ここまでしてでも「治療」してしまおうとする傾向について中村先生は、現代日本においては「死」に現実感が無くなっていて過度に避けようとしていることに起因していると指摘しておられ、寿命が来れば火が消えるように亡くなっていくことの意義について力説されます。
そういう自然なカタチでの「死」を迎えるために、過度の医療を受けないようにするための準備なども紹介しておられますが、多くの日本人にとっては、とりあえず死生観と言うモノについて一度考えを巡らしてみることが重要なのかも知れません。