夢は、努力でかなえる。/葛西紀明

 

夢は、努力でかなえる。

夢は、努力でかなえる。

  • 作者:葛西 紀明
  • 発売日: 2014/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 1992年のアルベールビル五輪から2018年の平昌五輪まで8大会連続でオリンピックに出場し、現在も現役のジャンプ選手として活躍されている”レジェンド”葛西選手の自伝的な著書です。

 

 ”天才ジャンパー”として高校生時代から世界を転戦されていた葛西さんですが、リレハンメル五輪のラージヒル団体で目の前にあった金メダルを原田選手の失敗ジャンプで逃したこと、妹さんが難病に罹ったこと、選手としてのハイライトともなるはずだった長野五輪直前に不慮の事故でお母さまを無くされ、かつケガで、その後金メダルを取ることになる団体メンバーから外れたこと、台頭してきた日本選手に不利になる様なルール変更の繰り返しなど、これでもかと言うほどの不運に見舞われたことを紹介されています。

 

 個人的には、”レジェンド”と呼ばれるのもいいのですが、かなり尖っていた若い頃のジャンピングスタイルをみてヨーロッパで呼ばれるようにようになった”KAMIKAZE KASAI”の呼び名が好きなのですが、あの頃の”尖った”感じは不断に見舞う不運との戦うファイティングポーズだったのかも知れません。

 

 一時はW杯メンバーから外れてしまうなど、そのまま引退していても不思議ではなかったと思うのですが、不屈の精神で競技を継続し、7回目の五輪であるソチ五輪で個人では初のメダルである銀メダル、団体での銅メダルを獲得されるのですが、それを支えた家族、ソチ五輪後に結婚することになるパートナーの支えを強調された上で、「向こうからやってきた銀メダル」とおっしゃり、取るべくして取ったメダルのように感じられていたことをおっしゃっているのが印象的です。

 

 ヨーロッパのジャンプ界では、葛西選手より遥かに多くの勝利数を誇る選手からも手放しでのリスペクトを集めているということですが、オリンピックでのメダルという明確なカタチで報われてホントに良かったと思いますし、こちらもヨーロッパのトップジャンパー発祥であるらしい”LEGEND”の呼び名により相応しいモノになったのではないでしょうか!?