外務省に告ぐ/佐藤優

 

外務省に告ぐ

外務省に告ぐ

 

 

 久しぶりに”知の怪人”佐藤さんの本の紹介なのですが、結構この本は早期の著書で、佐藤さんご自身が勤められていた外務省に向けた”叱咤激励”です。

 

 冒頭でドイツやロシアの「魚は頭から腐る」という俚諺を紹介されていますが、この本が出版された2010年当時、かなり外務省は腐敗した状況にあったようで、ロクに任地のコトバもできない外交官が重要なポストについたりして、そんなんじゃ”外交”なんかできるワケないやろ!?という状態が、ロシアのような日本に取ってかなり重要度の高い国でも起こっていたらしいことに加えて、公金の流用などのリッパな犯罪行為と言った不祥事も起こっていたということで、日本を代表するエリートである外務省=魚の頭と考えると、日本全体が腐り始めているのではないかという警告を発せられています。

 

 そもそも外務省は割と女性関係の不祥事に肝要だということと、外国との交流の中で様々な”役得”もあって、かなり昔から表ざたにはできないようなこともあったようで、ご自身の懺悔も含めて、過去に佐藤さんが関わった外務省の官僚が如何に悪行の限りを尽くしていたかということを、一部の事例については実名入りで暴露されています。

 

 とは言いながら、やることはやってたぜ!と言いたいこともあるようなことがあって、ただただ政治家に追従するだけだったり、国益を毀損して恥じるところにない上に、”伝統的”な不祥事は忠実に受け継いでいる現在の外務省職員に相当言いたいことはあるんでしょう…

 

 さらには民主党政権で、佐藤さんと共に”国策捜査”の犠牲となった鈴木宗男氏が、外務副大臣として”外務省でリベンジ”する可能性のあった時期のことにも言及されていて、佐藤さんご自身も鈴木氏の秘書として外務省に乗り込みリベンジする可能性もあり、お二方を陥れた当事者が戦々恐々としていたことにも触れられていて、実現したら面白かったのに…とちょっと思いました。

 

 何度か著書で書かれているのですが、佐藤さんご自身インテリジェンス活動には、適性もあったし成果も出したのですが、好きでやっていたことではなかったということで、今となってはそういう実務面での活躍はありませんが、のちの深遠な精神世界もモチロン魅力的なのですが、こういう切った貼ったの佐藤さんもやっぱり捨てがたいな、と…