0から学ぶ「日本史」講義 中世篇/出口治明

 

0から学ぶ「日本史」講義(中世篇)

0から学ぶ「日本史」講義(中世篇)

 

 

 出口さんの日本史本の『古代篇』に続く第二弾です。

 

 中世史と言うと戦国時代の一部を除きかなり地味な印象なのですが、出口さんはこの本の冒頭で日本の原型が形作られた時代だと位置づけられており、出口さん自身は日本史の中で中世が一番好きだともおっしゃられており、それだけに意外なほどの中世史のうねりを提示されています。

 

 この本での”中世”は平安時代院政が始まった時期から、室町時代後期の戦国時代の始まりの時期を扱われています。

 

 出口さんは世界史の流れの中での日本史の在り様を掴むことを再三提唱されていますが、中国の影響を色濃く受けた古代とは異なり、平清盛日宋貿易元寇足利義満勘合貿易(実は最新の研究では”勘合”というのは実態に合わないそうですが…)を除けば、遣唐使の派遣も取りやめた後、かなり世界史の流れとは切り離されて独自の動きをしていると指摘されています。

 

 特に中世史での大きな動きは武士の台頭による封建制の形成で、鎌倉時代以降を中世とする考え方が大勢のようなのですが、武士の台頭のキッカケを作ったのが院政であり、院政自体が割と日本史特有の考え方だということもあり、院政の始まりからを中世とされているようです。

 

 基本的には封建制の展開といった流れなのですが、突然変異のとしての建武の親政の取り上げ方が興味深く、結局は後醍醐天皇の独善性が故に破綻するのですが、流れとしては、足利尊氏の優柔不断さ故のワンクッションとしての位置づけをされています。

 

 さらには平清盛が宋銭を大量に輸入したことを契機として貨幣経済の萌芽が見られ、それまで世界的な最貧国とされていた日本での商品経済の活性化の萌芽という見方ができるようです。

 

 本の構成としては、最終章の手前に中世史全体の総括をされているのがありがたく、全体の流れというか、歴史的な意義を把握しやすい構成となっています。

 

 最後に中世史に人々の注目を集めるキッカケとなったベストセラー『応仁の乱』の著者である呉屋勇一さんとの対談が収められていて、これがメチャメチャ面白くて、是非ともこの対談で1冊作ってもらいたいと切望します。