ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人/伊藤歩

 

 

 マーケティングを専門とする方が、NPBの各球団の経営について、マーケティング的な観点を中心として評価された本です。

 

 10数年前だとNPBの各球団に、マーケティングがどうのこうのといっても、”何のこと?”って感じだったと思うのですが、最近はIT企業が球団を保有するようになっただけではなく、かなりビジネスの世界で経験を積んだ人たちが球団の経営を担うようになったこともあり、かなりファンのニーズを重視した球団経営をするチームが増えてきているのは確かなようです。

 

 押しなべてあまり強豪といえないチームが、なかなか勝てない中で必要に迫られて、少しでも球場に来てもらえるように、ということでマーケティング的な手法を取り入れて、ということが多いと思うのですが、元々そういうアプローチだったのが、球界を代表する強豪となってからもそういった姿勢を継続しているソフトバンクは、ある意味最強なのかも、とこの本を読んでいて感じさせられます。

 

 タイトルにある巨人は、あくまでも本業志向ということで、いいとして、タマにしか上位には絡まないけど、あまりにもファンの熱意が高すぎるが故に、いくら負けても経営上の困難を感じることない阪神や、どういう状況になってもファンの方を見る気がないじゃん無いかとすら思える中日って、一回出直してほしい気もするのですが、そういう状況も含めて、かなりチームごとに重点を置いているところがバラエティに富んでいるのは、当たり前といえば当たり前なんですが、かなり新鮮なオドロキでした。

 

 まあ、このままでいいとは思わないのですが、こういう様々なカラーがあるということが、それなりの価値を見いだせる部分ではあるのですが、やっぱり殿様商売の時代は過ぎているんでしょうし、今、そんなに経営上の心配のないチームも、謙虚に現状を受け止めて欲しいな、という気がします。