通勤電車のはなし/佐藤信之

 

 

 交通ネットワークの研究をされている方が紹介する東京と大阪の鉄道ネットワークの進展についての本です。

 

 コロナ禍で、鉄道のあり方が問い直されている昨今ではありますが、この本が出版された2018年においては、様々な対策の効果もあり、絶頂期からすると随分混雑が緩和して来てはいるものの、それでも東京メトロ東西線やJR総武線などピーク時の乗車率が200%に近い路線があり、未だ混雑緩和の対策のための新路線の開発や設備増強などの対策が続いていることが紹介されています。

 

 それと比較して大阪圏においては、最も混雑するところであっても概ね乗車率が130%程度になってきており、混雑対策のための拡張はひと段落してきつつあるということです。

 

 そうなると今度は少子高齢化に伴う人口減少を視野に入れる必要があり、如何に鉄道会社が収益を確保していくかということを考える必要が出てくる可能性が高く、コロナ禍に伴う通勤客の減少で急激にそのことを現実として捉えないといけない状況にはなってきていますが、この本ではまだそういう可能性が高い、という問題提起をするにとどまっています。

 

 ただ、利便性向上のための路線開発は未だ多く残っており、急激な環境の変遷と相まって、首都圏・関西圏の鉄道のあり方がどう変わっていくのかは、興味をそそられるところなんで、シュリンクに向けた取り組みについても紹介される本が出てくればと感じました。