一勝九敗/柳井正

 

一勝九敗 (新潮文庫)

一勝九敗 (新潮文庫)

  • 作者:正, 柳井
  • 発売日: 2006/04/01
  • メディア: 文庫
 

 

 ユニクロを運営するファーストリテイリングを国内随一のアパレル販売会社に育て上げられた箭内さんの自伝的な著書です。

 

 ユニクロと言えば、今や日本を代表するアパレル企業ですが、良く知られているように元々は山口県の小さな紳士服専門店だったのを、柳井さんが社長になられてからカジュアルウエアの販売店に業態転換をし、さらには衣料品の製造販売というこれまで例を見ない業態に転換し、大成功を収めて今日に至っています。

 

 しかも結構な短期間で急激な成長を遂げたということで順風満帆に思われがちですが、この本の中で様々な試行錯誤を紹介されています。

 

 この本のタイトルの「一勝九敗」というのは、元々商売で「十戦全勝」なんてことはあり得なくて、まあ十個にひとつでも当たればいい方で、ただ「九敗」の中で会社の存亡に関わるような大失敗さえしなければよくて、「一勝」に向けて様々なトライをすればよいという柳井さんの新年みたいなモノが込められているようです。

 

 ユニクロって、結構名前が通るようになってからもハデな大失敗をやらかしているのを、ちょっと経済関係のニュースに興味のある方ならご存知だと思うのですが、この本の中でも、カジュアルウエアはスポーティーなものが多いからということで、スポーツカジュアルに特化した「スポクロ」なんてのを立ち上げたけど大コケした話や、ユニクロの最初の海外展開で当初の展開が早すぎて、体制が整わず一旦縮小したなど、かなりいろいろな失敗をしていたようです。

 

 ただ多くの日本企業、特に大企業とは異なり、失敗をすることを全く恐れていないように見受けられるのと、ただ失敗するのではなく、ちゃんと振り返りをして、そこからの教訓を次へと活かしているように思えます。

 

 「スポクロ」はポシャったけど、今やユニクロでもスポーツカジュアルはかなりのラインアップを占めていて、ワタクシなどもランニング時に重宝していますし、海外展開も多くの国に広がっているなど、ちゃんとリベンジをしているところがスゴイところだと思います。

 

 この本は2005年に出版された本で、この本の最後の方に社長を退任した旨を紹介されていて、あと10年も経営には携われないとおっしゃられていますが、これだけはさすがの柳井さんでもままならないようで、現在は会長兼社長だということです。

 

 それにしても、ユニクロは日本人のファッションセンスを底上げしたとも言われるように、あまり服装に無頓着だった層のファッション性を格段に向上させ、その功績をはもっともっと評価されていいと思っていますが、その片鱗を感じさせてもらいました。